Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)は、Salesforce社が提供するBtoB企業向けマーケティングオートメーションツールです。2007年にPardot社として創業、2012年にExactTarget経由でSalesforceに買収され、2022年に「Marketing Cloud Account Engagement」として正式にリブランドされました。Salesforce Sales Cloud・Service Cloudとのシームレス連携が最大の特徴で、日本国内でもSalesforce導入企業を中心に広く採用されています。
ただし「Pardotという旧称がまだ広く使われていて情報が錯綜している」「料金プランが4段階あり機能差が分かりにくい」「Salesforce連携の設計が複雑」という声が多く、導入時に混乱するケースが少なくありません。本記事ではMarketing Cloud Account Engagementの基本機能・料金プラン・導入から運用定着までを、当社がBtoBマーケティング支援で蓄積した実務視点で整理しました。
Pardot/Account Engagementとは:Salesforceネイティブ連携のMAツール
Marketing Cloud Account Engagement(以下、Account Engagement)は、Salesforce Marketing Cloudのサブプロダクトの1つです。Salesforce Sales Cloud/Service Cloudと同じデータ基盤(Salesforceオブジェクト)を共有し、リード・コンタクト・取引先・商談が一元管理されます。
名称変更の経緯
2022年4月にSalesforceが「Pardot」を「Marketing Cloud Account Engagement」に正式変更しました。変更の背景は以下です。
- Salesforce Marketing Cloudファミリー全体のブランド統一
- BtoB(Account Engagement)とBtoC(Engagement)の製品ライン明確化
- Salesforceエコシステム内での位置付けの再定義
機能・仕様は連続しており、既存Pardot契約はそのままAccount Engagementとして利用可能です。国内では旧称「Pardot」「パードット」がいまだ広く使われており、営業・マーケ現場でも両方の呼称が混在しています。
Account Engagementの主要機能
主要機能は以下です。
- リード管理: Salesforceリードとのシームレス同期
- メールマーケティング: ステップメール・自動フォローアップ
- フォーム・ランディングページ作成
- プロスペクトトラッキング: 匿名ユーザーのWeb行動追跡
- スコアリング・グレーディング: 行動スコア+属性グレード
- エンゲージメントスタジオ: 自動化シナリオのビジュアル設計
- ダイナミックリスト: 条件に基づく自動リスト化
- ABM(アカウントベースドマーケティング)
- Einstein AI(予測リードスコアリング)
- B2B Marketing Analytics(Advanced以上)
- Agentforce(AIエージェント、2026年新機能)
関連サービス: BtoBマーケティング支援(MA運用含む)
Salesforce Sales Cloud/Service Cloudとの関係
Account EngagementはSalesforce本体(Sales CloudまたはService Cloud)の契約が前提です。以下の関係で構成されます。
- Salesforce Sales Cloud: 営業・商談管理の基盤
- Account Engagement: マーケ領域のMA機能
- 両者が同一データベースを共有し、リード→商談→受注のフローを一気通貫
Salesforce未導入企業はAccount Engagement単体での導入ができない点に注意が必要です。
Account Engagementの料金プラン全体像
Account Engagementの料金体系は4つのプランに分かれています。全プランで年間契約が前提、月払いには非対応です。
4つの料金プラン
| プラン | 月額目安 | 主な機能 |
|---|---|---|
| Growth | 150,000円〜 | 基本のMA機能(メール・フォーム・LP・スコアリング) |
| Plus | 300,000円〜 | Growth + A/Bテスト・高度な分析・カスタムロール |
| Advanced | 480,000円〜 | Plus + Einstein AI・B2B Marketing Analytics・API連携強化 |
| Premium | 1,500,000円〜 | Advanced + 高度ABM・Slackインテグレーション・Premier Success Plan |
価格はUSドル建てから日本円換算されるため、為替で変動します。上記はSalesforce本体の料金とは別途発生します。
料金に影響する変数
- プロスペクトデータベースのサイズ(標準1万件〜)
- メール配信数(プランによる上限あり、超過で追加料金)
- ユーザー数(管理者・担当者の役割数)
- API連携数
- サポート体制(Standard/Premier)
Growth月15万円は比較的導入しやすい価格帯ですが、Advanced以上になると月48万円超と負担が大きくなります。自社の運用規模と必要機能を精査して選定することが重要です。
Salesforce本体の費用も忘れずに
Account Engagement単体では使用できません。最低限必要なSalesforce本体の費用:
- Salesforce Sales Cloud: Essentials(月3,600円/ユーザー)〜Enterprise(月19,800円/ユーザー)〜Unlimited(月39,600円/ユーザー)
- Marketing Cloud Account Engagement: Growth(月15万円〜)
営業組織の人数に応じてSales Cloud費用が変動します。5人〜10人規模の営業チームでもSales Cloud Enterprise が月10〜20万円追加になります。
Account Engagementの使い方:導入から運用定着までの6ステップ
Account Engagementを初めて導入する際の実務ステップを整理します。
ステップ1 Salesforceとの連携設計
Account Engagement導入の最初の関門が、Salesforce Sales Cloudとのデータ連携設計です。以下を事前に決定します。
- リードオブジェクトとプロスペクトのマッピング
- コンタクト・取引先とのリレーション設計
- スコアリング・グレーディングの基準
- 営業への通知タイミング(MQLからSQLへの移行条件)
- カスタムフィールドの同期範囲
Salesforce管理者とマーケ担当者の連携が必須のフェーズです。Salesforce公認コンサルタントと協議しながら設計します。
ステップ2 初期設定とプロスペクト管理
Account Engagementの初期設定は以下です。
- Salesforceコネクターの有効化
- プロスペクトデータベースの初期化
- ドメイン・メール配信用ドメインの設定
- SPF/DKIM/DMARCの設定
- トラッキングコードのWebサイト埋め込み
トラッキングコードを自社Webサイトに埋め込むと、匿名訪問者のWeb行動データが自動的にAccount Engagementに蓄積されます。
ステップ3 フォーム・ランディングページ・メールの作成
基本的なアセットを作成します。
- フォーム: プロスペクト獲得用フォーム作成、Webサイトに埋め込み
- ランディングページ: コンテンツ単位のLP作成、フォームと連携
- メール: HTML・テキスト版の同時作成、テスト送信で挙動確認
フォーム送信時にプロスペクトが自動作成され、スコアリングが開始されます。
ステップ4 スコアリング・グレーディング設計
Account Engagementの特徴的な機能が「スコア」と「グレード」の2軸評価です。
- スコア: プロスペクトの行動(メール開封・資料DL・サイト訪問)に応じた点数
- グレード: プロスペクトの属性(役職・業種・企業規模)に応じたA〜Fの評価
スコアとグレードの組み合わせで、営業引き渡し基準を明確化します。例: 「スコア100以上 + グレードA/B」のプロスペクトを営業に自動通知。
ステップ5 エンゲージメントスタジオでの自動化設計
エンゲージメントスタジオは、自動化シナリオをビジュアルで設計するツールです。「ホワイトペーパーDL→3日後にフォローメール→開封したらさらに詳細資料送付→未開封なら営業に連絡」などのシナリオを分岐構造で定義できます。
Marketoの「スマートキャンペーン」、HubSpotの「ワークフロー」と同様の機能ですが、Salesforceのデータを直接参照しながらシナリオを組める点が強みです。
ステップ6 B2B Marketing Analyticsでの分析
Advanced以上のプランで使える「B2B Marketing Analytics」で、マーケ施策のROI・パイプライン貢献度・チャネル別コンバージョンを可視化します。Tableau CRM(旧Einstein Analytics)ベースの高度なダッシュボードが利用できます。
Account Engagementの導入でつまずきやすい6つのポイント
当社がBtoBマーケティング支援を行う中で、Account Engagement導入時に繰り返し発生する「つまずき」パターンをまとめました。
1 Salesforceとのデータ同期エラー
リード・コンタクト・取引先のマッピング設計が曖昧だと、同期エラーが頻発してデータが不整合になります。初期設計で、各オブジェクト間の関係性とカスタムフィールドの同期ルールを厳密に定義することが重要です。
2 プロスペクト数超過による追加料金
契約したプラン上限を超えるプロスペクトが蓄積されると、追加料金が発生します。古い・非アクティブなプロスペクトを定期的にアーカイブする運用を組まないと、予期せぬコスト増になります。
3 スコア・グレードの運用乖離
スコアとグレードの基準を設計しても、運用中に見直されず陳腐化するケース。四半期ごとに閾値と商談化率の相関を確認し、基準をチューニングすることが必要です。
4 エンゲージメントスタジオの複雑化
エンゲージメントスタジオのシナリオを複雑に組みすぎて、誰が何を設定したか分からなくなるケース。シナリオごとにオーナー・目的・停止条件をドキュメント化することが重要です。
5 Salesforce管理者との連携不足
マーケ部門だけでAccount Engagementを運用しようとすると、Salesforce管理者との調整不足で設定変更がブロックされるケースがあります。マーケ担当者とSalesforce管理者の定例会議を組むことが運用継続の鍵です。
6 Premier Success Plan未加入でサポート不足
標準サポートのみ契約の場合、トラブル時の対応が遅い・英語対応のみといったケースがあります。Premier Success Plan(有償オプション)加入で24時間サポート・日本語専任担当が付きます。運用重要度に応じて加入判断が推奨です。
【独自】Account EngagementでBtoBマーケ成果を最大化する5つのコツ
当社がBtoB企業のAccount Engagement運用を支援する中で見えた、一般的な使い方解説には載っていない運用Tipsをまとめます。
1 「グレードA + スコア高」の双方を満たすプロスペクトに絞って営業に渡す
スコアだけで営業にリード渡しすると、属性要件を満たさない低品質リードが混入します。「グレードA or B」かつ「スコア100以上」の両方を満たすプロスペクトに絞って営業に自動通知することで、営業の商談化率が大幅に改善します。
2 匿名プロスペクトのWeb行動データを営業ナーチャリングに活用
Account Engagementは匿名訪問者の行動もトラッキングしており、後日フォーム送信で実名化された時点で過去行動データが統合されます。「過去3ヶ月のWeb行動履歴」を営業商談時に共有することで、商談の質と成約率が上がります。
3 Salesforce Chatter/Slack連携でリアルタイム情報共有
Advanced以上のプランでSlack連携機能が利用可能です。「重要プロスペクトのアクション発生→Slack営業チャンネルに自動通知」のフローで、営業リアクションの速度が向上します。
4 エンゲージメントスタジオのテンプレート化で施策実行スピードを上げる
よく使うナーチャリングシナリオ(ホワイトペーパーDL後の育成・展示会後のフォロー・セミナー後の商談化)をテンプレート化しておくと、新規キャンペーンの立ち上げが数時間で完了します。
5 B2B Marketing Analyticsで「パイプライン貢献度」を可視化
Advanced以上で使えるB2B Marketing Analyticsで、「各マーケ施策が受注パイプラインのどれだけに貢献したか」を定量的に示せます。マーケ部門の社内プレゼンスと投資対効果の説明責任を果たす強力な武器になります。
関連サービス: BtoBマーケティング支援(MA運用含む)
Account Engagementのよくある質問
Q Account EngagementとMarketing Cloud Engagementの違いは?
両方ともSalesforce Marketing Cloud配下ですが、用途が異なります。Account Engagement(旧Pardot)はBtoB向け、Marketing Cloud Engagement(旧ExactTarget)はBtoC向けの大規模メール配信・マーケティング機能です。BtoB企業はAccount Engagement、BtoC企業はEngagementを選ぶのが基本です。
Q Salesforceを使っていないとAccount Engagementは使えないか
原則としてSalesforce本体(Sales CloudまたはService Cloud)の契約が必要です。Salesforceを営業の中核システムとして使わない場合、Account Engagementのメリットは限定的です。Salesforce導入が前提でない企業はHubSpotやMarketo等、独立運用可能なMAツールを検討することが推奨です。
Q AI機能(Einstein)は使いこなせるか
Advanced以上でEinstein AI(予測リードスコアリング・Einstein Email Insights等)が利用可能です。2026年以降はAgentforceによる自律的なAIエージェント機能も追加されています。いきなり全施策に適用するとROI測定が難しいため、特定のセグメントでパイロット運用して効果を検証してから拡大するアプローチが推奨です。
Q PardotからAccount Engagementへの移行作業は必要か
不要です。名称変更のみで、既存の設定・データ・ライセンスはそのまま引き継がれています。ただし公式ドキュメント・ナレッジベースの最新情報は「Account Engagement」の名称で記載されているため、情報検索時は新名称でも検索することが推奨です。
Q 他のMAツール(Marketo、HubSpot)からの移行は可能か
可能です。Salesforce公認コンサルタントが移行ツールとプロジェクト支援を提供しています。ただしデータ構造の違い(コンタクト/リード概念、スコアロジック)を再設計する必要があり、2〜4ヶ月の移行期間を見込みます。
まとめ:Account EngagementはSalesforce連携の価値で導入判断する
Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)は、Salesforceとのネイティブ連携を最大の武器とするBtoB向けMAツールです。Salesforce導入企業にとっては、マーケと営業のデータを一元管理する最適解となりますが、Salesforce未導入企業にとってはメリットが限定的になります。
導入時の成否は「Salesforceとのデータ連携設計」「スコア/グレードの運用基準」「エンゲージメントスタジオの標準化」の3点に集約されます。Salesforce管理者とマーケ担当者の連携、Premier Success Plan加入の判断、AI機能の段階的導入を運用サイクルに組み込むことで、投資対効果を最大化できます。
当社では、Salesforce + Account Engagementの導入設計、エンゲージメントスタジオの運用支援、B2B Marketing Analyticsでの成果可視化まで、BtoBマーケティング戦略と統合した形でご支援しています。「Account Engagementの導入を検討している」「Salesforceとの連携で成果が出ない」とお悩みの方はお気軽にご相談ください。
関連情報:
Account Engagement(旧Pardot)運用のご相談はローカルマーケティングパートナーズへ
Salesforce + Account Engagementの導入設計、運用定着化、B2B Marketing Analyticsでの成果可視化まで一気通貫でご支援します。Account Engagementの本格活用を検討されている方、Salesforce連携に行き詰まっている方、ぜひ一度ご相談ください。